個人的評価
素晴らしい授業です。放送大学の中でもとびぬけて社会人万人向けおすすめ度が高い授業。
最近ではクリティカル・シンキング本がはやりで、グロービスさんではほぼこれを導入に持ってきて若手をシビレさせてグロ信者にさせているのではないかと思うほどの魅力(魔力?)があるといわれている。うちの会社でも研修に行かせると、突然「MECEが〜」「ロジックツリーが〜」と言い出す人が出てくるので。
物事を考える際に人が陥りがちな思考のクセを一つずつ説明していくのがこの「より良い思考の技法」。技法とは言っているもののフレームワークに当てはめるロジカルシンキングの延長ではなく、認知心理学や論理学がベースになっているので、よくあるクリティカル・シンキング本のようなハウツーを期待していると期待はずれかも。
この授業はもっと普遍的な考えとか、学問的な考察をもとに一つ一つを紐解こうとするところに価値がある。人の心がわかるみたいな本が山ほど本屋に売られているけど、社会心理学をベースに特定の切り口を大きく見せているものだったりするので、そんな玉石混交な新刊本で時間を無駄にするのではなく、その大元狙いのほうが早いのではないだろうか。
これ、主任講師の菊池先生も作りこむの相当大変だったのではないかと思ってしまう。だって、クリティカル・シンキングの説明なので、そこで説明されている内容に沿っていないと目立っちゃうし。
授業は中盤から頭の体操を超え、論理的に考えるなかなかのハードタイプ。試験は教科書にある概念をきちんと理解できているかを試すようなもので、難しくはありません。
放送大学は会社員をはじめ、自営業の方や看護師など社会人学生が多いので、「研究」というよりは「教養」に重きを置いている。はっきり言って大半の試験の合格水準は低いし、レポートなどの負荷もそれほどでもない。ただ、真面目に学べばそれこそ多くの知識がしっかり身につく内容は用意されている。
入学金を払う必要はあるけど、ある意味研究者から学生まで誰もがなん度も繰り返しみることができる放送授業や、自分の名前で書いた教科書で全ての授業が作られているってすごいこと。著作もなく、査読あり学会誌でもあまり論文を見ない名ばかり教授が多い大学と比べたらやっぱり放送大学できちんと勉強した学生の教養はいいところ行くんじゃないだろうか。
研究にも役立ち、ビジネスでも使えて、社会で生きていくための教養にもとても重要な思考の技法を学ぶこの講座は心底万人にお勧めで、もう必須科目でもよいのではないかと思うくらい。これこそ教養学部の授業って感じで、これを超える授業にはなかなか出会えない。
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