個人的評価
授業の難易度:★★(まずまず)
試験の難易度:★★★(時間が足りない!)
社会人おすすめ度:★(経理マンならいいかも)
会社で数字を扱うので、そこそこ真面目にやってみようかと思い立ったので。
結果、内容としてはとても満足です。資産除去債務、退職給付引当、のれん代など実務上出てくるので何となく理解しているようでやっぱりよくわかっていなかったというものがよくわかりました。
試験結果はC。いや~ギリギリ合格です。ナンバリング310何ですよね、この授業。内容的に結構わかっていたつもりですが、とにかく計算が間に合わない。「正しいものを二つ選べ」なので、五択のなかで一つあたりが見つかったら終わりではないので、実質的に取り掛かる問題数が多いです。当然ながら検算する時間もほどんどないということで、試験自体は散々な結果になりました。試験前までは何とかなるだろうと思っていたのが、試験で全く通じなく愕然とした授業でした。
個人的には学ぶことが多く取ってよかった授業の一つに上がります。一方で万人にお勧めするとなるとちょっと専門度が高いかなという気がします。営業マネージャーとかであればここまでの会計理論は不要です。逆に経理マンやM&A担当を目指す人なんかはいいんじゃないかなぁと。デューデリジェンスの際の企業価値評価のベースにはやっぱりこうした会計知識必要ですし。
第1章 会計の意義
第2章 複式簿記の仕組み
第3章 簿記一巡の手続
第4章 貸借対照表と損益計算書の作成
第5章 資産会計(総論)
第6章 資産会計(流動資産)
第7章 資産会計(有形固定資産)
第8章 資産会計(無形固定資産・投資その他資産)
第9章 負債会計(総論・流動負債)
第10章 負債会計(固定負債)
第11章 資本会計
第12章 損益会計
第13章 財務諸表
第14章 連結財務諸表
第15章 財務会計の展開
第1章は会計学そのものの説明です。会計学の教科書とか、アカウンティングの真面目な本では最初に出てくるような役割面と公準、ストックとフローの概念と貸借対照表と損益計算書に行くのですが、「財務三表」として挙げられるキャッシュフロー計算書についてはあまり力を入れていないんですね。「会計学」っていう範疇だとこれは違うのかな。
第2章、複式簿記の仕組みです。おそらく伝票をうんざりするほど扱っている人や、ビジネス面で財務諸表を見ている人にとっては飛ばしてもいいくらいではないでしょうか。
第3章は簿記の流れです。ここも簿記3級レベルの人であれば難なくクリアです。放送大学は多種多様な学生が来ていることを踏まえて、最初の3章くらいはごくごく基本的なことをしっかり説明するというパターンが多いですね。
借方と貸方という概念が最初の壁だと思うので、初学者はまずここからと思うものの、本当の初学者は専門科目に分類されるこれをいきなり取らないかとも思うので、ややこの章の位置づけは不明です。
第4章、このあたりからが会計学の始まりな気がします。現金主義と発生主義の違いは割と重要。その違いがいろいろな言葉で出てくるので、一気に会計感が増します。この章もどちらかといえば定義のお話で、ケーススタディというよりはあくまでも理論を進めていく感じでした。
第5章は資産の分類です。正常営業循環基準、一年基準といった流動資産の考え方と、それを超える固定資産の考え方などの整理ですが、ここもやっぱり簿記などをやっている人にとっては知っていることが多いという印象でしょうか。後半の貨幣性資産と費用性資産や資産の評価あたりは少し授業っぽさを感じます。最後の現在価値については私は先にファイナンスの授業をとっているので楽勝な考えではありますが、ここはもう少し細かく説明しないとよくわからないという印象になる人多いかもしれませんね。
第6章は流動資産。棚卸資産や有価証券についてがポイントでしょうか。
第7章は有形固定資産。ここはわりと大変。減価償却はふだん何らかの会計やっている人であればあたりまえなことではあると思うのですが、減損会計やファイナンスリースの計算などは手を動かすことが少ないので、実際に計算しようとするとなかなか大変。支払利息と減価償却を両方計算するので慣れれば簡単な理屈ではあるものの、手計算では結構時間がかかります。
第8章は無形固定資産、投資その他の資産。ソフトウエア資産の計上は多くの会社で使われる結構大切な考え方ではありますが、SaaS以降はこの手の重要度は減りました。一方でM&Aが多くの会社に身近になってきた今ではのれん代の償却計算が結構身近なテーマですね。会社がM&Aして特定の部門の予算に組み入れられるとその償却費用を予算計上しないとならないので、知っておくと「M&Aで売上増えてラッキー!」みたいな安易な話にはならないことがわかります。
そのほか有価証券の評価も結構熱いテーマです。洗い替えの方法などはいかにも試験に出そうなテーマです。
第9章から負債です。資産と同様に流動負債から入りますが、負債をどのように認識するかが細かく説明されます。引当金あたりはビジネスでも考え方を知っている必要がありますね。
第10章の固定負債は社債、資産除去債務、退職給付引当金あたりは以下にもどれかが試験に出そうな雰囲気です。というか、両方試験に出ました。短時間で計算ができるようにするために相当練習が必要です。私はこの辺軽くできるとおもって舐めていたので試験で計算が追いつかず痛い目を見ました。
第11章はいわゆる「純資産の部」の説明です。純資産の部がどのように構成されているかが分かれば良いのかと。
第12章、ここにきてP/L(損益計算書)の話がちょっと出てきます。なるほど会計学ってB/S(貸借対照表)から入る感じなんですね。複数要素の契約と返品権付き販売も計算問題で出そうな雰囲気です。
第13章、財務諸表。ビジネスとして重視されるキャッシュフロー計算書がここでやっと出てきます。
第14章の連結財務諸表は関係会社間での取引を正しく理解するために結構重要かも。個人的にはグループ会社間での取引を正確に理解できて親子間での取引のアイディアにヒントをくれる項目でした。
第15章は全体のまとめと財務マンが知っておくべき知識といったところでしょうか。有価証券報告書の件は会社経営者にも役に立つ内容ではあるのですが、一般的にはここに至るまでの章は経理畑の人以外にはオーバースペック感がありますし、逆に経営担当者にはこの章が言わんとしていることが現実とずれていると思いがちではないかという気がします。
会計学はなかなかアカデミック寄りなので、産業・経営系の基礎科目ではありながら、実務面で必要とするものとは少し違ったかなという感じです。逆に、会計をしっかりやりたい人にとっては一つひとつ丁寧に細かいところまで押さえている授業という印象なので真面目に取り組むと会計に一言ある人になるのではないかと。将来的に経営層を目指すのであれば、きちんとした会計議論ができる基盤になるので実務面にとらわれすぎずに受けるのが良いかと。
とにかく硬派です。大学の授業っぽいので、放送大学もこういう授業がちゃんと一定数残ることを期待します。
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